hamaji junichi

composer saxophonist

shimaf[タタミ カサネ クミナオス]

今日は福島諭さんのソロ名義の新作について書きたいと思う。

shimaf[タタミ カサネ クミナオス]


http://bookofdays-shop.com/?pid=10659851

福島さんによれば、音源はすべて「8」という数字によって関係づけられている作品であるらしい。
数字によって関係づけられる、、、といえば、バルトークフィボナッチ数列を使った作曲が個人的には想起されるが、数字という概念は音楽と密接に関わっていることはことさら自分が書かなくともその構造から読み取れるのは自明でもある。ある領域では。

track1.KASANE Oct.02.2008は八本のサイン波をそれぞれ独立してFM変調させてゆく作品。サイン波の特性上、その音響情報が「8本」であることを聴取することは困難であるが、しかしながらそのうつろう時間軸にそった微かな変異、変容が耳に届き、聴取者に作用するのは、その基本となる概念が音に「のっている」ことを証明している。その概念が「音にのる」ことの意味を考えさせられる作品。

track2.TATAMI Oct.05.2008もあるサウンドファイルを「8」という概念で構築されているが、こちらはそのもととなるサウンドファイルの音響情報もフィードバックされていて、イノセントな世界観を表出しているように聴いた。

track.3.4は新潟の「正福寺」でのライブ音源で構成されていて、track.1.2の方法論を前半、後半に分けて使用している。このライブ録音がもっとも心に触れた。煌めく瑞々しい音響が空間を支配し、そこに「固有の時間」とよべる時間を表出してゆく様子が克明に記録されている。微かで、しかし激しくもある静かな変容の集積はその根底にある「概念」の強度の証明でもある。

track.5は2.4で使われた元音源が収録されていて、そのサウンドファイルが如何に変容したかの焦点をあたえてくれる。

はげしくおすすめの作品。音楽の構築、構造をある焦点から強烈に照射する行為を捨ててはならない。それは「音」に必ず反映されることを教えてくれる作品。それは「感覚」を呼び覚まし、それによってのみ「感覚」はある真実性を孕む。






福島諭さん関連ウェブ
http://www.iamas.ac.jp/~shimaf02/
http://mimiz.org/index.php