hamaji junichi

composer saxophonist

東京2日目(横浜)

クラリネットの伊藤めぐみさんから星いただきました)上の星をクリックすると伊藤さんのブログに行きます。フランス語の翻訳もされてるとのこと。ということは、ランボーや、ボードレールヴェルレーヌ、特にフランソワ・ヴィヨンの詩を原文で読めるということですね。うらやましすぎる。ヴィヨンの詩なんて翻訳出てないでしょ、今は。


写真は全て福島さん撮影
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mimiZ(鈴木悦久さん、福島諭さん、飛谷謙介さん)



スタジオに着く。mimiZの皆さんは午前中から録音を開始されていて、僕は途中から参加させてもらった。鈴木悦久さんとはけっこう久しぶり。最近ドイツから帰ってこられた。

このレコーディングのお話をいただいてから、複数の演奏上のシステムを用意していたのだけれど、結論から言うとその半分も使わなかった。実際に演奏するのと頭のなかでシミレートするのとでは違うのは当然なのだが、なにもかもが許されている訳ではないのを実際に演奏して宣告されたような気がした。これはファースト・セッションで吹きながらすぐに思ったこと。目の前には厳然とした「mimiZの領域」があり、サックスのベルの前で運動を続けている。その運動に調和する奏法、音の選択法があるはずだ、、、というのはわかったが、さてどうするか、ということだ。まずその領域を知らないと話にならない。なので次のセッションからはその領域を探る演奏になった。言うまでも無くサックスは平均律で思考する。楽器自体が思考するシステムがそれに基づいている。で、それはとても強力。休憩時間に鈴木さんと飛くんとでそのことを少し話した。

「mimiZの領域」は言うまでもなく、長い三者の濃密な時間共有から生み出されたシステムから生まれている。今回の試みはそこに「異物」を投げ入れることとも言える。飛くんが言っていたがmimiZの基本的な演奏システムが安定した「かたち」になるまで1年かかったそうだから、これは大変だな、、、と思った。

限られた時間のなかで何かを引きずり出さなければならない場合、様々な語法、技法をデタラメに試すより、何か決まったひとつのものを執拗にやり続けることの方がかえって視界がクリアになり、それをもとに次のものが見えてくる。そういった判断から数テイクは決まったシステムひとつだけを演奏し続けた。

次にマルチフォニックスだけを使ったもの。

そうやって時間が過ぎていった。

常に思索を強いる演奏なので、休憩はとても大切だ。飛くんとはもう、だいぶ馴染みまくっているから彼と話すのは何話しても楽しい。鈴木さんとも「まちがったこと」について意見が合い、僕の悪態に付き合ってもらったり、、、福島さんは傍らで静かに微笑んでいて、ぽつりとええこと言うみたいな、、、
福島さんは世界一ラップトップの似合う男で、あのかっこ良さは稀有なんだよとか、、、なんたらかんたらとか、、、バカ話とか。


そうして夕刻になりクラリネットの伊藤めぐみさんがhttp://clarit.omegumi.com/参加された。伊藤さんは福島諭作曲作品「フロリゲン・ユニット」の奏者のひとりでもあり、シュトックハウゼンなどをレパートリーにされていると聞いていて、お会いするのが楽しみだった。昨年までフランスにおられたそうだ。



音は当然のごとく素晴らしいし、かっこ良い。

長時間のセッションのため、僕も、鈴木さんも飛くんも福島さんも途中しんどなってきていたけれど、伊藤さんが参加されると、気分もリセットされた。

伊藤さんを迎えて最初のセットは楽器どうしのコールアンドレスポンスなども飛び出し、平均律楽器が2つになればそうなるのは自然なのだけれど、新しい風が吹いたような気がした。福島さんが嬉しそうにしていたのが印象的だった。

その後は伊藤さん一人で吹いてもらうのを聴いていたりするなかで、あるテイクでは、これは僕が一人で吹いたのだけれど、細かな音符が永遠に続くような、音を敷き詰めるものをやってみた。吹いている間はまっしろな何も無い部屋で、変質狂がものすごい速度で白い紙に「彼だけがわかる、わかっている法則」でもって意味不明の文字をとても細かくひとつひとつが正確なかたちで埋めているような映像が浮かび、同時に音楽上のテキストで言えば例えば下のFisから上のCに行くまでのモード、半音の進行、かたまり、分散和音の半音進行などなど高速で思考処理しながら吹いた。演奏後、ひとつの手応えをもった。


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伊藤さんは飛くんのシステムにひどく興味がおありのようだった。いろいろ聴いていた。そんな風景やみんなと会話するのを見ながら彼女のオープンマインドさが窺い知れた。素晴らしいな、、、とおっちゃんは思いました。

<<伊藤めぐみさん飛谷謙介氏にレクチャーを受けるの図>>

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録音されたものを聴き返すなかで、これはmimiZだけのテイクだったか、空間を埋め尽くすノイズの塊の向こうでキリスト(キリスト的なものと言ったほうが正しい)が見えたような気がして、鈴木さんと飛くんに言った。僕にとってはこの瞬間がもっとも美しかった。


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皆さんとみなとみらい駅あたりで解散。時間があればご飯とか一緒にしたかったけれど、贅沢な時間をあれだけ過ごすことが出来たのだから良しとしなければいけない。福島さんと新宿まで行きコーヒーを飲んでまたその後のやりとりいくつかを急いで話し解散。



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ホテルに向かう為大江戸線にのって東新宿に行っていたら「次は中野坂上〜」乗り換えせなあかんかったのを知らずに間違いに気付く。「ふっざけんな、クソ野郎、なんなんだよ、ったく」


(了)


福島さんの記述
http://mimiz.org/index.php?ID=751