hamaji junichi

composer saxophonist

respice finem 2−3

2日目。

お昼に福島諭さんと待ち合わせ古町に。book of daysの移転した古町。画廊「full moon」に到着し、セッティング。越野さんに煙草吸うのを許可してもらい、ありがたく思う。肩身の狭すぎるにも程がある喫煙者の哀愁と悲哀と迫害を越野さんと話し、美味しいコーヒーをいただく。越野さんはとても素敵なお人柄。

岐阜から映像作家・池田泰教さんと美術家であり音の作品も多く手がけられているウエヤマトモコさんが到着される。今回お二人に撮影と録音をお願いしていて、その荷物の多さに気圧される。今回初演の作品「埋没する3つのbluesにささげるcondensed music」のためのスピーカーを制作していただいた高橋悠さん、高橋香苗さんも到着され福島さんと私はリーハーサルをしながら、同時進行でカメラの配置、スピーカーの配置など相談しながら決めていった。ウエヤマさんの音を捉える動き、、、様々な場所をチェックし、どこに音場が結ばれどこで反射し、どのような音場のかたちをしているか、、、をふっと話す様子に皆感心する。やはり根本的に音の捉え方、嗅覚が違うようだ。池田さんのカメラの配置にうれしくなる。録音マイク、カメラ、スピーカー、コンピュータ、サックスが配置され終わった空間はちょっと名状し難い佇まいをそこに留めているようだった。

今回うれしい驚きというか、映像作家の前田真二郎さんが会場にいらっしゃってくれ、我々のリハーサルを撮影などされていた。前田さんは前日東京におられたそうだ。

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一部


福島諭作曲作品「Amorphous Ring II」今回で3度目の演奏になる。2箇所ほど演奏が些細な破綻を起こしそれが残念でならないが、次の課題として心にとどめておこうと思う。

「無題1:氷中フロレットより移植されたもの」と題された福島さんの新作。譜面に書かれた作品、つまり音符で書かれたもののシステムをコンピュータに移植し、その思想が反映されたコンピュータによる作品で、その双方向の可能性を示唆するものと聴いた。つまり、コンピュータで組まれた作品の思想を譜面音楽に、今回のように音符によって表出される作品をコンピュータの作品に、、、という双方向性の作品が出来ることの可能性。僕はそれを強く感じ、コンピュータ作品であっても何かそこに(純粋な)コンピュータの作品単独では表出し得ない領域を内包しているように聴こえた。

2部

トーク。我々の作品の説明というか、思索の形成過程などを皆さんにご説明しつつ、福島さんと話した。うまく伝わったかどうか、、、はなはだ心もとないけれど、「変容の対象」という作品のやり取りについて少し、きちんと話せたのは良かった。もう少し、「変容の対象」についてはどこかで機会があればそれ単独で話せたら、、、と思うが、、、

「埋没する3つのbluesに捧げるcondensed music」
今回初演の作品。この作品は「最初に言葉ありき」ではないが、、、その言葉から着想を得た作品で、題名が全てとも言える。音楽作品としては少し特殊な制作過程をへて生まれた。着想が2011年の半ばあたり、1年あまりをかけた。
高橋悠さん、高橋香苗さんに依頼した小型スピーカー3つと、福島さん所有の3つのスピーカーがそれぞれ3角形に配置され、その結界のなかにサクソフォンが配置されている。さらに今回は池田さんの3つのカメラがその外周にこれも3角形で配置され、その頂点の延長線上にウエヤマさんの録音マイクが上方と下方から狙われている。

高橋悠さんのtwitterから転載。小型スピーカーの解体写真。
http://twitter.com/#!/slow_glass/media/slideshow?url=pic.twitter.com%2FHxXLdSHt

悠氏が会場に持ってきてくれていたライトはやはり、あのテスト時の写真のライトだった。「もしかして、、、」と搬入の時思ったが自信がなかったから言わなかったけれど。粋。
http://twitter.com/#!/slow_glass/media/slideshow?url=pic.twitter.com%2FjBGNQBc3


導入は高橋両氏の制作した小型スピーカーから出力される極めて小さな音が出力され、それが7分間持続する。その7分間を分岐点として、音がその他のスピーカーから出力されはじめ音場が拡大してゆく。その音場が一定のかたちを留めたところで配置されたサクソフォンを手に私が演奏をはじめる。
もともとインスタレーション作品として着想したもので、そのプロトタイプとしてある一定の成果を得られたように思う。サクソフォンのリアルタイム演奏パートについては更新が必要と思った。

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今回たくさんのお客さんがいらっしゃっていただき、嬉しく思った。ディーゼルギターの能勢山さんとも久しぶりに話せたし、円秀さんも多忙な中駆けつけていただいた。美術館学芸員の濱田さんには新潟日報に文章を書いていただいた。発表後、埋没〜のインスタレーションの可能性について少し意見をいただいた。また、近代美術館の発表時にお世話になった学芸員の桐原さんも久しぶりにお会いできて嬉しく思った。


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打ち上げでは高橋香苗さんが隣、その隣に悠さん。その反対の隣には前田真二郎さんでおっさんの腹パワーアップしまくりの話やら、なんやら、、、香苗さんはとても柔らかい語り方をされ、悠さんは輪郭の確かな語り方をされていて、それが印象に残った。前田さんがこられるなら朝までお付き合いしたかったが、福島家でお世話になることになっていたので、良い時間に解散した。

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福島家に着いて、福島さんの奥様からも感想を聞いた。す、するどい。福島さんの奥様も耳の良い方。

ブコウスキーを読みながら寝る。4時間ほどで目が覚め、散歩し、福島家の愛犬ジョンを手なずける。人見知り激しいジョンだそうだが、最後には腹を見せてごろんとしている。しかし、ジョンさん、ええかげん覚えてちょうだいよ。けっこう来てるで、おっちゃん。

福島さんが頭爆発させて「おはようございます」ウォーズマンどころのさわぎではない頭髪の爆発具合であった。

ところで、福島さんは激高することあるのだろうか、、、傲慢なところ微塵も無いその語り口、尊敬の念を抱かずにはおれない。天使?

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3日目

お昼に前田さんと待ち合わせ。万代橋あたり。福島さん、奥さん、私、前田さんで新潟市立美術館に濱田さんに会いに。

それから奥さんを送りに村上に行き、3人で美術家・吉原悠博さんに会いに新発田に。吉原さんに作品などいただき、少しお話しした。吉原さんのお母さんや、奥様ともお会いでき良かった。吉原さんは今年2つの大きな発表をされる。(2012年8月14日〜9月2日「水の記憶」吉原悠博映像プロジェクト:新潟県立近代美術館


福島さんと前田さんに空港まで送ってもらい、お別れ。

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やはり、、、というか、空港の荷物検査で、ポケットの中とか、ベルトなどはずしていると、サックスのケースをもう一度カウンターに行って計ってもらって来いと。シールが古いからと言う。ため息をつき、2階からまた降りて1階のカウンターに。計測してもらい許可を得、また戻る。大阪に限らず他の空港でも古い検査のシールで通れたが、新潟は厳しいのか、でもそのシールがあるってことは大きさのチェックしたから貼っているのであって、なぜそんな無駄なことをさせるのか?荷物の寸法を決めたのは政治らしいが、あの寸法にどんな根拠があるのか、、、そもそもあのテロがあって、何もかも変わってしまったけれど、そういった下らないやりとりが、楽器をもつ者から、美しかった旅の思い出を一瞬で奪うのをご存知か?

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大阪で一泊。天王寺の素晴らしいホテルトラスティ。
新しいホテルで、ここは超お勧め。おしゃれだし。
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帰る。

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ウエヤマさんから「埋没〜」の音源を送っていただく。
ちょっとこの前の演奏システムではある部分ではフリージャズに聴こえてしまう。ここは問題だ。
前田さんともリアルタイム演奏の抽象化され具合を車中で話したが、改めて考察が必要だ。福島さんにも意見を聞かなければならない。福島さんと以前やりとりしたテスト音源があるのだがそれを再度分析しなおすことからはじめようと思った。昨日の午前4時頃のこと。



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和歌山。日課を吹く。その日課はこれから少し変更し、埋没〜のためのアルペジオシリーズを加えることにしようと今日はテストしていた。amorphous ring IIは改めて録音し、福島さんに送るつもりだ。



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福島諭さんによるレポート
http://mimiz.org/index.php?ID=795