hamaji junichi

composer saxophonist

ところで、身体の反応が悪い。遅いのである。楽器を吹いていると、それは非常に微少な遅れであるが致命的であり、おおよそこのような不快は日頃感じることはない程の不快である。思い当たるのは意識の沈殿である。それは澱と澱のあいだに頸まで浸かっているような鈍い感触で、視界にも影響を及ぼすようである。譜面の上で視線は上滑りし、見ているようで何も見ていない。気付けば自然そうなっているので、破綻する。この気色の悪い感触とともに時間を過ごすのは耐えられないので楽器を置いた。それで川端康成の「雪国」の読み止しを開き、最後まで読む。雪国とは新潟のことであった。一説にはトンネルのむこうは黄泉の国と聞きかじったことがあったが、読んでみてそれとは感じられなかった。聞き違いであったか。妙ななまあたたかい女の吐息と気配、男と女の内にある淫らな気配はそれと知らず張り巡らされているが、その結びつきは幻夢のようでいて、血肉が通っており、性愛の層の上に叙情の層と凡庸な日常のうえに結ばれる関係がたわいもない会話に浮かび上がり「そういうものだ、、、」と思わせる、、、などと考えていたのかいなかったのか、今書いている、単なる暇つぶしか、もうそんなものはどうでも良い。兎に角、精神と身体は均衡を欠いている。不快このうえない。


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昼の感じを引きずったまま、花粉にもやられているのか、気分がひどくおちているので午後10時には床についた。眠れるだろうか、、、と思いながら、ヘッセの短編をひとつ読んだあたりで文字通りおちる。随分眠ったような気がしたが今は午前2時。さて、これからどうするか、、、思案するが先ほど見た悪夢を反芻するつもりで、、、いや、夢は醒めるが現実は醒めないからそれこそ悪夢であると思い、そうか、醒めない悪夢はここにある現実であったか、、、と思い至ってなお、現実に微かな夢を探そうとする。滑稽な生き物である。