hamaji junichi

composer saxophonist

今日はクリスマス・イヴだそうだ。この日キリスト誕生前夜の厳かにして神秘的なるものはその口を永遠に閉ざし、この国においてはほぼ経済活動の刺激剤としての機能しか持たないとはいえ、それもまた人々が生を営むエンジンであるには変わりないのでそういった意味でも人々にとっては忘れようのない日である。ホテルは満室。おしゃれなお店はのきなみ人々で溢れかえる。良いではないか。しみったれた世の中よりは。貧困こそ悪である。

坂口安吾に「不良少年とキリスト」というのがある。たぶんそこでドストエフスキーのことが少し書かれていた(ような気がする。多分)安吾によると、ドスト氏ぐらいになると自分でキリストを創造した。最後に間に合ったと書かれていて、それは「カラマーゾフの兄弟」のことで、カラマーゾフの兄弟はドスト氏最後の作品であり、最高傑作にあげるツワモノの作家も夥しいほど居る作品でもある。しかし、僕は読んでいない。だから今、読みたいと思う。切実に。ドスト氏が創造しえた「キリスト(メタファー)」を見たい。

ドスト氏は貧困のうちに死んだ。(ものすごい博打打ちだったためとか諸説ある)当時のロシアの作家がおそろしいほどの長編を書いたのは原稿料がその枚数だったか、つまり量で決まっていたためだということをどこかで読んだか、聞いた。天才でも貧困は切実な恐怖であり、必死で書きまくったのだろうか。それを想うとちょっとチャーミングでもある。