hamaji junichi

composer saxophonist

「変容の対象」2012・5月3−4小節目、respice finem

5月17日、福島諭さんから『変容の対象」2012・5月3−4小節目が送られてくる。

暫くその譜面を眺め、そこに留めている「気配」を見る。


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福島さんとの二人展。まだ様々なことが終わっていない。作品についての、特に初演した「埋没する3つのbluesに捧げるcondensed music」は更新を二人で為さねばならない。

そして、今回二人展の映像記録をお願いした、映像作家の池田泰教さん、音の記録をお願いした美術家のウエヤマトモコさんとのそれらの記録の編集作業は今、福島さんとお二人の間で進められている。

以下にそれについての福島さんの記述がアップされていたので転載させてもらう。

その文章を読んで「欲しているものの正しい姿」「あるべき姿」が目の前に現れることの価値を噛み締めている。高次な意識が閃光を放つ。それを目の当りにするのが信じられないような、、、そういった「熱狂」を僕は愛する。


以下作曲家・福島諭さんの記述です。



2012年5月12日の本番を終えて、記録を担当してくださった池田泰教さん、ウエヤマトモコさんとも連絡を取り合っている。
濱地潤一さん作曲の
《埋没する3つのbluesに捧げるcondensed music》
の記録に関して事前に池田泰教さんから提案があり、それを実現するための作業が宿題として残っている状態なのだ。

今回、この曲の編集においては手作業ではなく、コンピュータプログラムを走らせて行うことになる。当面、そのプログラムを作らなければいけないが、それに向けての準備段階でもいくつかのサブプログラムが必要となる。
16日の夜にしばらく池田さんとその打ち合わせのためにチャットしたのだけど、映像におけるフレームの考え方など、音の世界とはまた違う概念があり、初めて聞くことなどもいくつかあった。

感動したのは「ドロップフレーム」というつじつま合わせ(?)のややこしい概念を、補正する数式を池田さんが提示してこられたので、すごいなぁ!とコメントしたら、これはその前日に飛谷くんから聞いたのだと言う。どちらにしてもすごい。

「ドロップフレーム」の概念をプログラミングで実現しようと思うと、僕ならリニアに考えてしまって、それこそややこしいプログラムを書いてしまいそうだった。でも飛谷君の数式はもっと物事を包括的に捉えているのが分かって、これぞ数式という感じ。できる人なら当たり前なのかもしれませんが。基本リニアにしか考えられない自分が嫌になりました。とても大きな発見でした。

ということで、それを受け取って、《埋没,,,》編集に必要なチャンネル切り替えのフレーム数に添ったリスト作成作業が必要になり、それのためのプログラムを書いて池田さんに確認してもらったり、やり取りを数回行っている。

そのサブプログラムも目処がつき、走らせて18日の夜にはリストは出来上がるだろう。

メインプログラムは池田さんが作成予定。

音に関してはウエヤマさんの記録は、音への愛着も加わり十二分に満足できている。


今回で言えば、「ドロップフレーム」に関する飛谷君の数式が心臓。それをもとにしたリスト化のためのプログラミングが身体。それを用いて池田さんが精神を吹き込むようなものですね、とチャットで言ったら、
プログラムをただ走らせて編集するわけだから、精神は入りませんよ。などと返された。


今回の池田さんのアイディアはとても明確な道筋をもっている。まずはそれを実現するために今やるべきことがわかるのだから、それをやって実現させたい。こうしたやりとりは珍しいし、実際にプログラムを組んでいても楽しいものだった。
こうした問題解決のための態度を示唆する言葉として、「respice finem」が用いられることもあるようだ。最後を考慮せよ=目的を見失うな。

言葉の内包する意味、このレンジの広さもなかなか面白い。