hamaji junichi

composer saxophonist

小川洋子著「人質の朗読会」を読む。音楽は別にして、世界とコミットするのは本だけで充分だと思ってしまう程小川作品の世界は美しい。その美しさのなかには時には痛み、疼きなどが一雫、まるでそれとは悟られないでいようとするかのように控え目に落とされていたりする。

だいたい僕は2冊か3冊併読していて、ひとつは小説。もうひとつは音楽史、または音楽理論書、もしくは音楽分析書の類いなどなど。理論書、分析書の類いも読みようによっては教えを乞うもの以外の豊かな物語性を表出してくれることもある。

ある棚にはセリーヌの全集の一部がいつもおいてあり、ギニョルズバンドIIとかリゴドンとか死体派とか、読んだのか読んでないのか忘れて(昔から本の買いだめを習慣にしているから)そのまま置いてあり、いつか確認せねばと思いながらその黒い背表紙をもう何年も睨みつけているのである。