hamaji junichi

composer saxophonist

福島諭作曲作品「双晶I」(仮題)の録音を3日間。結局満足なテイクは録れなかった。1日20〜30テイクほど。そうやって連続でマイクを通した、、、つまりアンプリファイドされて細部が顕微鏡で拡大されるような、、、作品の様々な様相が見える経験をし、作品が内包するサクソフォンという楽器のもつ構造的な問題も、、、それはフラジオ音域に於ける、、、が、見え、来年からの本作品とどう対峙してゆくべきか、、、が理解されたのは収穫だった。それは作品に於けるある側面の限定された理解にしか過ぎないが、それが解釈の全体を支えるひとつの確固たる視点であり、そうやって確かな確信を礎に演奏概念を構築しなければ解釈などと口にしてはいけない。また、反復、、、2時間ほどの時間に、20テイクあまりの演奏を繰り返し、外部と完全に遮断された世界に埋没する行為はその作品を演奏する経験値を格段にあげることは知っている。そして、その埋没は、この作品の力を語った。

フラジオ音域の障害故に例えば、ソプラノサックスで演奏されるとしたら、この作品は台無しになる。アルトサックスのフラジオでしか、おそらく、、、と思えるような組織だと改めて思った。

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今日は大晦日。《変容の対象》2013年度版も無事終わり、顧みれば2012年度版(抜粋)の初演も無事行われた。福島さんの「bundle impactor」の初演、浅草のアサヒ・アートスクエアの演奏もリッチな空間でその演奏に関われたことも思い出される。今でも複数のスピーカーから個別に飛ぶリアルタイム・プロセッシングの音像のシンフォニックな映像体験、、、音楽は、ある側面では極めて映像的なものだ、、、を反芻できる。

さて、作曲などの音楽に関する様々な事象はどれも得難い一年だったように思える。しかし、生きてゆくこととなれば恐らく今年が最も酷いものだったようにも思う。まったく笑えない。