hamaji junichi

composer saxophonist

新潟 一日目


新潟に向かう高速バスの車中で、福島諭さんに聞くべきことは何かを考える。
様々な視点が介在するはずのその作曲技法、作曲の思想、プロセッシングについて、デヴァイスの構築から透けて見える地平とは。共作をこれから続けてゆく上で知りたいことは山ほどあるのだが、こちらはコンピューターの言語をほとんど認識できないローテク故、具体的な質問は想起できず、つい形而上にまで飛躍してしまう。形而上に向かうこともそれはそれで意味のあることではあるが、音楽の神秘的領域とは別に極めて具体的に構造を相互認識出来る領域の話をしなければならない、、、と考えながら少なからず初めての地に向かう微かな緊張感を感じながら6時間。新潟駅についた。

無事に福島さんと会え、ご実家に。これから2日間お世話になる。豪快なお父さんのお話に耳を傾けながらお母さんの手料理をいただく。「ふるさとは語ることなし」なんといってもここは安吾の地である。

そこから午前3時ぐらいまで明日のイベントのためのトークの視点のすり合わせをする。今回作曲した88小節による作曲の譜面や、半音階による作品の初期原案の譜面など見ていただきながらバスで考えてきた福島さんへの質問はその数割も聞けず、逆に福島さんから自分の考えについて色々質問いただいた。その数時間はお互いにとって得難い時間になったに違いない。これから互いに作曲の共作を進める上で、実際にこうして会い、時間を共有することなしにこのプロジェクトは一歩も踏み出し得ないとすら感じるのは、その時間が自分にとって豊穣な可能性を示唆したと実感できたからで、この時間を過せただけでも今回の新潟に来た価値は余りある。そんな初日であった。