この場合の「世界」とはまぎれもなく作曲家のものである。東京3日目
新宿。この強欲の街。と、演奏を終え、街を歩く上気した人波を見る事無く見ながら想起した夜とはうってかわって昼の新宿は健康的なほど青い空のもと陽光が反射している。
紀伊国屋書店に行き、「テンペスト」を買い、音楽書を見、その興味深い数々の本の前に立って思う事は私のような地方に暮らすものはこういった輝くばかりの価値の集積をその眼で見る機会を全て奪われているのだ、、、というものだった。
何か良い映画でもやっていないだろうか、、、と思い、映画館に行くが生憎興味をひくものがなかった。空港に行くまではまだ暫くの時間があったのでどうしたものかと思いながら歩く。昔は随分CDショップとかに通ったものだったがその日はユニオンにもタワーにも行かなかった。自分でもあきれるほどの枯渇感があり、毎日のように何か良い作品が出ていないか探しまわったものなのに、今はまったくその気が起きない。
あの渇きはどこに行ったのだろう。
この場合の「世界」とはまぎれもなく作曲家のものである。
昔からそう思っていたけれど、昨日は改めてそれを感じた。
black out