hamaji junichi

composer saxophonist

探していた小説は夢野久作のものだった。倉庫に入れてもう15年は経っている。倉庫に入っているのは全て東京で買った本たちだ。神田の古本屋街に毎週通った。金も無いので食事や、街の様子を楽しむこともなく、純文学を扱う店に行って贔屓の作家の棚を確認して帰ってくる。ついでにお茶の水ディスクユニオンでCDをチェックする。たまに女の子と一緒にそれをすることもあったが、ほとんどは一人だ。夢野久作を何故今更探していたかは「少女地獄」と「瓶詰め地獄」を読みたかったから。耽美の匂い。少女性のエロスは何も男だけが反応するものではないらしい。自撮りの女の子たちが倒錯したその淫美な気配を愛しているのをネットでみたりする。題名のもつ妖しい淫猥さは男であれ、女であれ、感じるものであるはずだ。「少女地獄」おそろしくエロい。

頭をセブンのjohn Doのように短く刈り込む。禿げ散らかしているほどではないがもう、完全に禿げの領域。45歳。生物としてはもう終わっている。僕が20代の頃、山手線で、30歳あたりの奇麗に頭の禿げあがったサラリーマンを見た。横山ノックばりに中央はもうまったく毛根が死んでいる。ただ、やたらとカッコ良い人だった。一目で高級とわかるスーツに身を纏い、鞄も靴も上品で選び抜かれたものであるのがわかる。清潔感も半端ではない。禿げでもこんなカッコええんかい!と思ったわけだが、女の人がどう見るかは知らん。

昨日は「elder」(仮)の譜面を読みながら旋律の分断点を切っていた。サックスとコンピュータのための室内楽作品。年に1作はと思う。書き換えを繰り返す作品で、時間をかける作品にしようと昨日決めた。