hamaji junichi

composer saxophonist

原宿vacant 後記

23日は原宿のvacantで映像作家、前田真二郎さんのプロジェクトでサックスを演奏してきました。

22日に前のり。

二子玉川「ライラ」
津上研太&若林一也】
津上研太(sax)若林一也(sax)

津上さん、若林さんのライヴを聴き、アルト・サックス2本でのジャズ・スタンダードの強度を感じまくる。スタンダードは背後の和声情報が強烈に機能している音楽だから、サックス2本でのアンサンブルでもその強度は鋭く聴こえてき、そうしてサックス2本ゆえの空間感覚がうまれるから、とても現代的に響くのだった。現代的な響き。これはとても重要だと思う。津上塾の塾生としてはやはり我が師津上さんの極上のクールネスに触れることが出来て感無量の感あり。最後にハグして会場を後にした。先生はいつも優しい。例外無く。

22日に前田真二郎さんと打ち合わせは出来ず。新宿に帰って寝る。3時間で起きる。仕方がないので持ってきた村上春樹ダンス・ダンス・ダンス」を読む。面白すぎて朝まで。上巻を読み終える。ええかげん寝ないと演奏が、、、と思いながら気を失う。多分朝7時くらい。

23日。気が付けばもう23日。福島さんに電話して、vacantのおおよその場所を聞き、新宿を出る。結局あんまり眠れなかった。原宿に昼過ぎに到着。久々に竹下通りを歩く。人が溢れかえっていて、楽器を持って人の隙間をくぐる。竹下通りを過ぎ、裏原のエリアに。行き交う人々がみんな幸せそうにうつる。これは自分の問題だ、、、とひとりごちる。

vacantに着き、前田さんと挨拶。2階の会場にあがり、福島諭さんと目が合う。福島さんにこにこである。嬉しくなった。救われた気がした。

お昼のイヴェントを少し3人で見て、一先ず会場を出、近くの公園に行く。最終の打ち合わせ。前田さんの指示を仰ぎながら、細部を詰めて行く。前田さんの映像や、福島さんのプロセッシング、進行表などおおよそのアウトラインの情報は共有しているが実際にやってみないとわからないことも多い。今回は前田さんの作品だが、音楽は自分に任せていただいた。その楽曲もお二人には確認していただいているが、1部に使用する「prelude」は決定していたものの、2部に使用する通称(3人の)「croma」と「prelude op.2」の使用方法でまだ焦点が定まってなかったから前田さんに確認した。もう今出来ることは全てやった。あとは本番である。






前田真二郎+福島諭+濱地潤一 (ライブ上映)




左から前田真二郎さん、福島諭さん
福島さん撮影
福島さん撮影

1時間半おしで本番。詳細は見た人たちが判断する類のものだから自分は書かないが、どう見、聴いたかはとても関心がある。(なぜなら映像と音楽の作品はとても難しいし、へたを打つと最悪の様相を露呈するから。しかもその可能性がとても高い)

演奏はとても集中できたように思う。没入感はんぱではなく、演奏後は疲労で抜け殻のようになった。
前田真二郎作品に参加できて本当に光栄だった。刺激的な夜でした。

前田さんの頭脳はクリアだ。

福島さんのプロセッシングは抑制が効いていて、バランス感覚がすぐれていた。一瞬サックスの音響が不意に拡大され浮かび上がった瞬間の印象が鮮やかに今も記憶に残っている。

使用楽曲について。
サックス曲の使用ポイントは大きく3つのセクションにわけられていた。
1.前半部、使用曲「prelude」循環呼吸による作品。決められた数種のゆったりとしたトリルに、実音のEsと同時に出力される重音が一瞬出現する。

2.「improvisation for cromatic notes and trill」と「prelude op.2」これらはそれぞれひとつの独立した作品でもあるが、それぞれブロックごとに作曲されているという共通の思想をもつ。この2つめのセクションではその特性をいかして、それぞれのブロックを横断する演奏をした。それぞれの動機をカットアップし、高速で処理してゆく。その後、互いの循環呼吸部をカットアップ方式で挿入。主に「prelude op.2」の動機を中心軸においた表現を採用した。(直前のミーティングで前田真二郎さんに指示を仰ぎ、「prelude op.2」の動機から演奏を開始し、その後の組織については一任された)

3.最後の映像の高速逆再生部。ここだけは完全に何も決められていなかったパートで、直前の福島さんの音響がトリガーとなって演奏された。演奏時、印象にのこった一瞬のひとつ。(後に福島さんによると、狙い打ちだったようで、故意に僕には前もって言わなかったそうだ。クリアすぎるほどクリアに伝わった瞬間でもある。音で対話は可能だ)



演奏が終わり、会場にいらっしゃった、にこやかな砂山典子さんと握手して感想などいただく。

福島さんのご両親も新潟からお見えになっておられた。度々お世話になっていて、愛犬のジョンというやたらやぶにらみの似合う愛犬の様子などお母様に聞いたり、豪快なお父さんと「変容の対象」という福島さんと僕の共同作曲作品について話したりした。

福島さんと会場外でしゃべっていると、福島さんのお知りあいの作曲家の方と女優さんとが来場されていて、4人で話す。お二人とも若いし、美しい。福島さん、彼女たちに「フッキー」と呼ばれているのね。心の中で「あらら、、、マジ?フッキー?ふっきー?カタカナかな?ひらがなかな?まあどっちでもええか。ちくしょう!うらやましいぜフッキー」とか思いながら、作品の感想などを言ってくださった。ありがたかった。なんかきらきらしてたな。

イヴェントが終わり、打ち上げ。福島さんと同期の作曲家・安野太郎さんも出演されていたので同席されていた。

安野さんに車で3人新宿まで送ってもらう。僕が無理を言って3人で前田さん行きつけのゴールデン街のジャズ・バーで最後の打ち上げ。楽しかった。さりげなく、レニー・トリスターノのレアもののライブ・アルバムがかかって静かに心躍った。メンバーはトリスターノ楽派のツワモノたち。

追記。ラグシーの伊達眼鏡を持っていって、福島さんにこんな眼鏡どうですか?とお勧めしておいた。似合い過ぎていて、どこか新進気鋭の作家のような面持ちに「ちくしょう!うらやましいぜ、ふっきー」と思った。











http://www.mimiz.org/index.php?ID=506福島諭さんによる記述。