hamaji junichi

composer saxophonist

8月31日東京ー高円寺ー円盤




http://bookofdays-shop.com/?pid=15570907

mimesis for string quartetの譜面を持っている福島諭さん

天気図と、予報を見ていやな予感。8月30日のこと。
朝目覚めると、和歌山は見晴るかす青空で、にわかには台風接近が信じられない。
白浜空港に到着。東京羽田に出発はするが、着陸が危険と判断されたら白浜空港に戻ることもあると説明を受ける。
予定の時刻は少し遅れたが無事東京に着陸。ほっとする。基本的に辺境の地に居るので、1回の発表が半端ではなく大切だ。自然の為せることとは言え、演奏が飛んでしまうことは自分にとって悪夢以外の何物でもない。

今年は福島諭さんと多くご一緒出来た。しばらく福島濱地のブッキングは無いので、何か次に繋がるような、そんな演奏がしたいと考えていた。

夕方、新宿で福島さんと合流し、高円寺に向かう。駅近くのよく行くカフェで「mimesis」の譜面と、サックス音源を渡す。

あ〜だこ〜だ話して良い時間になったので円盤さんへ。軽くリハをして開場を待つ。

そのリハの時、サックスでロングトーン(循環呼吸をまぜて)をして、プロセッシングの出音を確認した時に感じたものは多分ひとつのアイディアになると思った。音の重なりが生む新鮮な音響体験があった。

(そのあ〜だこ〜だの中の新曲のmimesisのプロセッシングについての話は興味深かったのでここに書こう)
事前に想定していた楽曲の構造をより良く福島さんに伝えるために今回はstring quartetヴァージョンの譜面を用意した。主旋律と、16分音符の連続が互いに侵食するようなアンサンブルの曲なのでその全体像がきちんと伝わるように用意して、その譜面を見ながら説明を一通りしたところ、福島さんからひとつの魅力的な提案があった、主旋律の最初の第一音をコンピュータに取り込み、その音を16分音符の音の組織(譜面では第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのパート)を組成する為のプログラミングを走らせることが可能だと。やはり譜面というものが2人にとっては強力な共通言語であることを再認識出来た瞬間であった。こういった会話が作品に直接機能することは幾度も経験してきたが、今回の会話から導きだされたコンピュータ・プロセッシングの方法論は次の拡がりを見せてくれるような予感がしたし、自分の想定(ライヴでの演奏想定)とはまったく違うところから出てくるアイディアの輝きに感動すら覚えた。

以下は土居哲真さん撮影の写真です。











そして本番。1曲目は福島諭作曲「Amorphous ring I」5月の名古屋、芸文での初演、7月の新潟近代美術館、そして今回が3度目の発表になる。楽曲の構造上、演奏者にはある時間の揺れが必ず介在する。その揺れ自体がコンピュータ・システムに機能して干渉し、毎回違った音の組織を表出する。しかしながら、楽譜に定着された音符と、コンピュータ・プロセッシング・システムはがちがちに決められていて、そのファンダメンタルな構造は毎回担保され、楽曲の強度は保証される。テンポ指示を厳密に守りながら、リアルタイムで組織される音の重なりに耳を澄ませ、発音の精度に集中する時間。非結晶の輪がそこに表出する夢を見た。

2曲目は濱地潤一作曲「contempt for soprano saxophone and computer」第1モチーフ、第2モチーフ、旋律のシステムが合計8つ。そしてコンピュータ・リアルタイム・プロセッシングによる楽曲。コンピュータ・プロセッシングがサックスの音色に影響を及ぼす瞬間を何度も自覚した。サックスの音色に影響を及ぼす、、、それは演奏者である、自分の内部を俯瞰する瞬間でもあった。息の流れ、管体を流れる息、振動するサクソフォン、その時の自身の内部、そして、今出ている「音」の始点と、終点。そして「音の意思」

終演後、牧野琢磨さんからどう「聴こえた」か本当に丁寧にお話をしていただいた。今後にいかしたい。

台風接近のなか、mimizの鈴木悦久さんや、土居哲真監督が来場くださって、楽しい会話も出来た。以前トリオで演奏させていただいた山本達久さんもいらっしゃっていた。

そしてTちゃん、ありがとう。

タイバンの方々も素晴らしい演奏で、豊かな時間を過ごせた。牧野さんのギター、ますます好きになった。shibataさんも良かった。田口さんのフィードバック強力でした。譜面のフィードバック!!!(観た人はわかります)

そして、聴いていただいた皆様本当にありがとうございました。

感謝の意を。


濱地潤一




福島さんのreportはこちら。
http://www.mimiz.org/index.php?ID=250